寝違え

目が覚めたら、首が痛くて動かしづらい……いわゆる“寝違え”と呼ばれる症状ですが、一般的には不自然な姿勢で寝てしまい、首に無理な負担がかかることで生じます。私の場合は、読書中にふと寝落ちしてしまい、うつ伏せ寝をした際に起こりやすいです。首まわりにある筋や腱、靭帯などの急性の炎症が原因と考えられているため、痛みが強く、さらに熱感を伴っている場合には2~3日は首に負担をかけない方がよいでしょう。

痛む部位を無理に伸ばしたり、揉んだりすると悪化する場合があるので要注意です。東洋医学には、経脈の流れを踏まえて手足にある遠隔のツボを利用して症状の緩和を図る方法があります。首まわりを流れる主に少陽経や太陽経の経脈上を確認すると、手足に圧痛が強いツボが見つかることがあります。

また、古くは寝違えのことを“落枕(らくちん)”と呼びましたが、同名のツボが手背にあります。これらのツボに対して少し強めの押圧を繰り返してみましょう。押圧しながら、あくまで無理のない範囲内で優しく首を動かしていると、徐々に痛みが和らぎ、可動域が広がってくることもありますので、困ったときにぜひ試してみてください。

 

 

【紹介するツボ】

①落枕(らくちん)奇穴

⇒手背、第2・第3中手指節関節の間の近位陥凹部。
(示指と中指の付け根にある関節の間で、少し手の甲側の凹みのところ。) 

 

後渓(こうけい) 手の太陽小腸経

⇒手背、第5中手指節関節尺側の近位可能部、赤白肉際。
(こぶしを軽く握り、手掌の小指側の横しわの端で、皮膚の表裏の境目のところ。)

③外関(がいかん)手の少陽三焦

⇒前腕後面、橈骨と尺骨の骨間の中点、手関節背側横紋の上方2寸。
(前腕には母指側に橈骨、小指側に尺骨という2つの骨があります。外関はこの2つの
骨間の中点を基準とし、手関節背面の横しわ(時計の文字盤が当たる側)から指3本分上方のところに位置します。)   



④懸鍾(けんしょう) 足の少陽胆経

⇒下腿外側、腓骨の前方、外果尖の上方3寸。
(外果の最も尖ったところから4横指ほど上方で、腓骨の前方のところ。)

 

 

 

author:工藤 匡(鍼灸科学科長)

※暮らしと健康の月刊誌「ケア」2022年11月号に掲載された原稿です。