陽気に誘われ外出する機会が増える時期になってきました。春服に着替えて心身ともに軽やかに歩くためにも、今回は歩行に影響を与える股関節周囲の痛みを取り上げてみます。
中高年者で注意が必要なのが変形性股関節症です。この変形性股関節症ですが、我が国では先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全といった基礎疾患に続発するものが多いとされるため、何か違和感を覚える時には既往歴の確認も含め、早めの医療機関での診察が重要になります。
東洋医学では、関節痛を「痺症(ひしょう)」として捉えます。「痺」とは閉塞不通を意味し、主に風・寒・湿・熱の邪が経絡に侵入することで気血の巡りが阻害され、関節痛が起こると考えます。土地柄、北海道では風邪・寒邪の影響を受けやすいため、春先も下半身の保温は大切になります。
また、一口に股関節周囲と言っても部位は様々です。痛みの部位と関係する経絡の流れを踏まえつつ、筋・筋膜をほぐすように前面なら胃経、側面なら胆経、後面なら膀胱経に属するツボの刺激をお勧めします。股関節への負担を減らすためにも、殿部・大腿部の筋力訓練やストレッチも日頃から合わせて行ってみてください。
①髀関(足の陽明胃経)
上前腸骨棘の下方にある陥凹部。上前腸骨棘と膝蓋骨底外端を結ぶ線上で、大腿骨の大転子の高さを指標に取ります。
②環跳(足の少陽胆経)
大転子の頂点と仙骨の下端部を結ぶ線上で、大転子の頂点側から3分の1のところに取ります。立位時に“お尻のほっぺ”のように凹むところに位置します。
③胞肓(足の太陽膀胱経)
第2後仙骨孔の高さで、後正中線の外方3寸(指4横指分)に位置します。仙腸関節の指標にもなる上後腸骨棘の外側あたりに位置します。
④風市(足の少陽胆経)
直立して腕を下垂し、手掌を大腿部に付けたとき、中指の先端があたるところに取ります。大腿外側にある腸脛靭帯の後方に位置します。
author:工藤 匡(鍼灸科学科長)
※暮らしと健康の月刊誌「ケア」2022年5月号に掲載された原稿です。