例年この時期は寒さのため運動不足になりがちですが、今年はコロナ禍の影響による外出控えによって更に活動量が減っているかもしれません。活動不足は様々な不調を招きますが、お通じの不調もそのひとつ。そこで今回は、便秘について東洋医学の視点から捉えてみたいと思います。
これまであまり便通の問題がなかった方が最近になって便秘になった場合、これは実証タイプの「肝鬱(かんうつ)」を原因とした便秘である可能性が考えられます。外出控えによる運動不足のほか、なかなか思い通りの生活が送れないことによる精神的ストレスは、五臓の肝の働きを損ない、気のめぐりを滞らせてしまいます。
この肝鬱による気滞は、腸の伝導機能を悪くすることで便秘を生じさせます。肝鬱による気滞が起こると、イライラしやすい、肩が張る、ゲップやおならが出やすい、口の中が苦く感じるなどの症状を伴うことがあります。
便秘に加えてこのような症状を認める場合には、気のめぐりを良くする工夫が大切です。自宅内でもできる運動(ラジオ体操やストレッチなど)と合わせて、ご紹介するツボ刺激も試してみてください。
【紹介するツボ】
①合谷(ごうこく)
⇒手背,第2中手骨の中点の橈側。
(母指と示指の骨が交わるところを確認し、その前方で示指側の骨際。)
②上巨虚(じょうこきょ)
⇒下腿の前面、犢鼻穴と解渓穴を結ぶ線上、犢鼻穴の下方6寸。
(下腿の前面で、有名な足三里穴から3寸(指の幅4本分)下方)
③太衝(たいしょう)
⇒足の甲、第1・第2中足骨間、中足骨底接合部の遠位陥凹部、足背動脈拍動部。
(足の第1指・第2指の間から指を上方に滑らせ、2つの骨の間で指が止まる所です。)
④天枢(てんすう)
⇒𦜝中央の高さで、前正中線の外方2寸。
(𦜝の高さで、前正中線から指の幅3本分外方)
⑤左腹結(ひだりふっけつ)
⇒𦜝中央の下方1寸3分の高さで、前正中線から左側に外方4寸。
(𦜝の高さから親指の幅1本弱下方の高さで、前正中線から左側に指の幅6本分外方)
※上前腸骨棘という骨の出っ張りの内側に位置します。
author:工藤 匡(鍼灸科学科長)
※暮らしと健康の月刊誌「ケア」3月号に掲載された原稿です。