かゆみ

個人差はありますが、一般に“かゆみ”は不快な感覚であり、酷くなると日常生活に支障をきたすようになります。湿疹や蕁麻疹みたいに皮膚所見がみられる場合は、皮膚疾患や内科疾患が疑われますので、医療機関の受診をお勧めします。しかし、特に皮膚病変を伴わず、かゆみだけを訴える場合には、精神的ストレスや疲労、加齢による皮脂欠乏などといった可能性も考えられます。

東洋医学では、かゆみのことを「風掻痒(ふうそうよう)」、「風痒(ふうよう)」、「身痒(しんよう)」と称することがあり、その原因として風邪や湿邪、血の異常などを取り上げます。また五臓のうち、皮毛をつかさどる肺の働きにも注目します。東洋医学では弁証に基づき、熱を取って風邪を治めるなら清熱のツボ、湿を取り除くなら利湿のツボ、血を補って皮膚を滋養するなら養血のツボといった具合に治療穴を検討していきます。今回はかゆみに対する基本的な治療穴ということで「合谷・肺兪・治痒」の3つのツボをご紹介します。「治痒」だけでなく肩関節周囲にかゆみ止めの効能があるとされるツボが多いのも、東洋医学の先人の知恵として面白いところです。

 

【紹介するツボ】

合谷(ごうこく) 手の陽明大腸経

⇒手背、第2中手骨の中点の橈側。

(母指と示指の骨が交わるところを確認し、その前方で示指側の骨際) 

 

 

肺兪(はいゆ) 足の太陽膀胱経

⇒上背部、第3胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分。

(第3胸椎棘突起下縁の高さで、後正中線から指2本分ほど外方のところ)

 

 

③治痒(ちよう) 奇穴

⇒肩峰の直下、腋窩横紋の前端と同じ高さ。

(肩甲骨の一部である肩峰の直下で、わきの下のしわの前端と同じ高さ)

 

author:工藤 匡(鍼灸科学科長)

※暮らしと健康の月刊誌「ケア」2022年9月号に掲載された原稿です。