肥満

東京オリンピックパラリンピックの選手の姿を見て、改めて健康の大切さを意識している方は多いのではないでしょうか。近年は過食や運動不足によって肥満になりやすい環境にありますが、健康的な生活を送るためには、やはり適正な体重を保つことが重要になります。

東洋医学の理論では、肥満の原因のひとつとして水分の病理産物である「痰湿」の影響を考えます。過食や美食、甘いものや油っこいものの偏食を続けると、脾の運化機能が失調して痰湿や脂膏が生じ、それが肌肉に停滞することで肥満になります。長期間にわたって痰湿が盛んな状態が続くと脾気虚になり、これがまた痰湿を生じやすくするという悪循環に陥ります。脾気虚になると、食欲不振や下痢・軟便のほかに、食後すぐに眠くなる、身体が重だるい、話すのが億劫、動くと汗が出やすく止まりにくいといった症状を伴うことがあります。浮腫んだ舌や、白い苔が厚くなっている舌も痰湿の影響を疑わせる所見です。

肥満の改善には食生活の見直しや日常的な運動が不可欠になりますが、東洋医学的には脾胃の機能を高め、同時に痰湿の除去を図る効能のあるツボ刺激も試してみてください。

 

足三里(あしさんり) 足の陽明胃経   

  ⇒下腿前面、犢鼻と解渓を結ぶ線上、犢鼻の下方3寸。

(膝蓋骨の先端の下にコリコリする膝蓋靭帯があり、その両脇に陥凹部があります。外側の陥凹部にあるツボを犢鼻〔とくび〕と呼びますが、この犢鼻から指4本分下の部分で、すねの骨の外縁に触れる筋肉〔前脛骨筋〕の部分に位置します。)

 

②豊隆(ほうりゅう)  足の陽明胃経   

  ⇒下腿前外側、前脛骨筋の外縁、外果尖の上方8寸。

(犢鼻と解渓の間を16寸とし、これを半分にした8寸のところに条口というツボがあります。この条口から外方へ中指1横指分、前脛骨筋の外縁に本穴を取ります。)

 

③公孫(こうそん) 足の太陰脾経     

  ⇒足内側、第1中足骨底内側の遠位陥凹部、赤白肉際。

(親指の付け根の関節の後方にある太白から、第1中足骨の内側縁に沿って後ろへ指頭で撫でていき、指が止まるところに位置します。)

 

④陰陵泉(いんりょうせん)  足の太陰脾経  

  ⇒下腿内側(脛骨)、脛骨内側顆下縁と脛骨内縁が接する陥凹部。

(すねの骨の内縁を指でさすり上げ、指が骨のカーブで止まるところに本穴が位置します。)

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author:工藤 匡(鍼灸科学科長)

※暮らしと健康の月刊誌「ケア」9月号に掲載された原稿です。