腰痛


今シーズンは全国的に雪の少ない日が続きどうなるかと思いましたが、2月に入り急激に降雪量は増え、気温も低い日が多くなりました。まだまだ身体はこわばりやすく、不調も多くなりがちです。今回は、身近な「腰痛」について東洋医学の視点から考えてみたいと思います。

 

東洋医学的には、慢性タイプの腰痛の原因のひとつとして「寒湿(かんしつ)」が挙げられます。寒湿とは、寒邪と湿邪が結びついた病態で、陽気や血の流れを滞らせ、筋や関節のこわばりや痛みを引き起こします。寒湿による腰痛では、寒冷刺激で増悪するが逆に少し動くと軽減する、じっとしている時間が長いとこわばる、腰下肢が冷えて痛むなどの特徴があります。

 

また、身体に冷えや異常な水分である痰湿が多くなると、舌や脈にも変化が現れてきます。舌の色が白っぽい、舌の苔が白く厚い、脈が沈んで遅いなどの所見は、寒湿による影響の可能性が考えられます。

 

身体を冷やさないように保温する、冷たい飲食の摂り過ぎを控えるといった日常生活の工夫に加えて、寒湿の改善に効能があるとされるツボの刺激も試してみてください。お灸もおすすめです。

 

 

author:工藤 匡(本校教員、附属臨床センター長)

※暮らしと健康の月刊誌「ケア」3月号の原稿を一部変更しています。

 

 

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この冬も膝が痛いとお嘆きのあなたに

寒さが厳しくなると膝が痛む、あるいは痛みがふだんより強くなる――中高年の方や、膝を痛めたことのある方からそんな声を聞いたことがありませんか。

 

今回は、膝の不調を軽くするツボを紹介しますが、その前に、寒い季節に膝の痛みや曲げにくさが生じやすい理由から。

 

たとえば、凍結して滑りやすい路面では、転倒しないように歩幅を狭くして、猫背気味に膝を曲げて歩いてしまいがちです。加えて厚手の衣類やブーツなどの着用で、足首や膝の曲げ伸ばしも小さくなります。本来であれば大きく身体を動かして緊張した筋肉をリセットしたいところですが、他の季節にくらべて屋内で過ごす時間が増え、運動量は低下。こうした条件が重なり、足の筋肉はしなやかさを失い、膝の動かしにくさや痛みに繋がっていくのです。

 

冬場は寒さから気・血・水のめぐりが悪くなります。膝関節に熱感や腫れがないことを確認し、問題がないようでしたら、次のツボを刺激してみてください。ツボ押しのほか、「血海」「梁丘 」「足三里 」はドラッグストアなどで売られているお灸もお勧めです。めぐりが良くなることで膝が楽になります。

 

「血海 けっかい」

「梁丘 りょうきゅう」

「陰陵泉 いんりょうせん」

足三里 あしさんり」

「委中 いちゅう」

 

ちなみに「膝掛」「膝毛布」は俳句で冬の季語なのですが、膝が寒かったり痛かったりしたら、よい句もできそうにありません。詠む前に、まずは上で紹介したツボ刺激してみましょう。

 

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胃腸のもたれ


今シーズンの札幌は記録的な暖冬で、雪の少ないお正月となりましたが、みなさんのお住まいの地域はいかがでしたか。

 

年末年始はクリスマスや忘新年会などのイベントで食生活に乱れが生じやすく、胃腸の不調を感じることも多くなると思います。

 

東洋医学では、消化器の中心的な役割を担う臓腑として「脾」や「胃」があげられます。食事の不摂生である「飲食不節(いんしょくふせつ)」の結果、脾胃に負担がかかると気の滞りが起こり、消化不良の原因となります。また、脾胃の不調によって気の逆上が起こると、げっぷや吐き気といった症状をきたすこともあります。

舌が浮腫んで大きくなる、舌の苔が厚くなるといった所見は、脾胃が弱っているサインかもしれません。


脾胃の機能を高めるツボとして、今回は「足三里」・「手三里」・「公孫」をご紹介します。


心地よい程度に押圧したり、お灸などで温めてみてください。食事をする前に刺激をすると予防にもなります。さらに、吐き気止めや二日酔いに効果が期待できるツボとして「内関」がありますので、併せてお試しください。



               
               author:工藤 匡(本校教員、附属臨床センター長)

※暮らしと健康の月刊誌「ケア」1月号に掲載された原稿を一部変更しています。

 

 

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寒い季節こそ、陽気に過ごしましょう

今年は、寒さが本格化する前に「暖房器具の温度設定をいつもの冬より低めにしよう」と心に決めていました。

 

部屋にあるFF式ストーブは、設定した室温に達すると暖房が切れ、室温が低くなると暖房が入るという、お馴染みの自動運転のしくみ。便利ではありますが、いったん高めの室温に慣れると、その後なかなか設定を下げられなくなります。

 

私の部屋の場合、例年は24~25度に設定していましたが、これを20度にすると、部屋の寒暖計の針が21度に保たれました。まずは、この程度の室温に慣れてみましょうか。消費税率もアップしたので、光熱費も節約もしたいし。

 

実はこれ、東洋医学的にも正解なんです。冬を健康的に過ごすには「陽」の気、すなわち陽気を身体に貯めることが大切――と、東洋医学では考えます。

 

陽気には、身体を温める働きがあります。しかし、この陽気は、汗と一緒に外へ漏れ出てしまうという性質をもっていて、室内が暑いと身体はちょっとしたことでも汗をかきやすくなるため、結果として、陽気を外に逃がしてしまうのです。

 

ポイントは、暖房の室温設定を低めにして、できるだけ衣類で温度調節をする習慣をつけること。外出時には暖かい服装、そしてマスクなどで肌を覆い、身体にある陽気を逃がさないようにします。

 

もちろん、陽気を充実させるツボ刺激もあわせて試してみてください。陽気を充実させるツボは「関元 かんげん」「命門 めいもん」。寒さの侵入を防ぐツボは「大椎 だいつい」「風門 ふうもん」。ツボの周辺を、使い捨てカイロなどで温めるといいでしょう。

 

東洋医学では、冬を「閉蔵 へいぞう」と呼び、春から消耗し続けてきたエネルギーを回復する時期と考えます。エネルギー回復の秘訣は、上で述べたように寒さの侵入を防ぐこと。そして夜は早く寝て、朝は遅く起きること。そう、早寝早起きではなく、「遅く起きる」で間違いないのです。ああ、東洋医学が一層、好きになりそうです。

 

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めぐりめぐって、冷え知らず

日ごとに寒さが増し、本格的な冬の訪れが近いことを感じます。家の中は暖かいはずなのに、どうも身体が温まらない―そんな身体の冷えが気になる時季でもあります。

 

冷えの症状は、「気」の働きが弱まった状態(=気虚 ききょ)から生じます。気の働きには様々なものがありますが、冷えとの関連が深いのは“推動(すいどう)作用”と“温煦(おんく)作用”です。“推動作用”は、身体を活動や成長へと推し進める働きで、血液循環もそのひとつ。一方“温煦作用”は、体温を維持調節する働きです。

 

この2つが正しく働いていれば、冷えは感じにくいはずですが、ここで「気」のほかにもう一つ、重要なキーワードが出てきます。それが「血(けつ)」です。

 

気の「推動作用」で押し動かされるものの一つが「血」。その「血」自体が栄養不足や身体の疲れによって不足(=血虚 けっきょ)していたり、血のめぐりが滞っている(=血瘀 けつお)と、全身に運ばれるべき熱が届かないところが生じてしまいます。これら血虚と血瘀はどちらも冷えの原因になってしまうのです。

 

したがって、気の働きを順調に保つには、日ごろから、栄養と休息をしっかりとった上で、血のめぐり、血行をよくするよう心がけることが大切です。

 

手軽に摂取できるサプリメントもいいかもしれませんが、めぐりをよくするには、軽く汗ばむ程度の運動やストレッチ法などのセルフケアを生活習慣に取り入れてみましょう。血管運動を調整する自律神経の働きを高めることも重要になりますから、下に挙げたツボの刺激もあわせて試してみてください。

  ①足三里 あしさんり  ②三陰交 さんいんこう

  ③気海 きかい  ④湧泉 ゆうせん

 

今回は東洋医学らしい用語がたくさん出てきましたね。温煦作用の煦の字、血瘀の瘀の字なんて、まず他ではお目にかかれない漢字です。さらっと書けると自慢できます。

 

※煦…あたためる、あたたかい の意

※瘀…とどこおる、停滞 の意

 

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ツボも効くけれど、目いっぱい休養を

秋の夜長を読書やDVD鑑賞で過ごしている人も多いことでしょう。楽しさのあまり、ついつい毎日のように長時間にわたって目を使い、眼精疲労になっていませんか。疲れ目を引きずっていては、仕事や勉強、遊びでフル回転できませんよね。うっかりミスも起きやすくなりそうです。

 

目の疲れが続くときは十分な睡眠を取って休養することが大切なのは、東洋医学も説くところです。ただし、その理由は東洋医学ならでは。目の疲れには「肝」が関係しているというのですから。

 

東洋医学では眼精疲労を「肝労」と呼び、五臓のひとつである肝の虚(一種の機能不全)で起こると考えます。肝は血との関係が深く、目はこの肝血によって栄養補給されるため、目を使い過ぎてしまうと血の供給が間に合わず、目の不具合が現れやすくなるわけです。

 

夜更かしや寝不足も肝血を損なう原因となります。もともと貧血気味で疲れやすい、顔や舌の色が白っぽい、爪が薄くて脆い、といった「肝虚」タイプの人は特に注意が必要です。

 

感覚器官と臓腑とのつながりは、目と肝の他にもあります。たとえば鼻は肺、耳は腎と深く関連していると考えるのが東洋医学です(ただし、東洋医学で言う肝、肺、腎は、私たちが思い浮かべる肝臓や肺、腎臓そのものとは必ずしも同じではありません)。

 

繰り返しになりますが、疲れ目の回復には目の休養が基本です。そのうえでツボ刺激も試してみましょう。目の疲れに効果のある主なツボとして「攅竹 さんちく」「太陽 たいよう」「風池 ふうち」「太衝 たいしょう」が挙げられます。

 

仕事や勉強の合間には目を休めるべきなのに、どうしてもスマートフォンやパソコンを見てしまい、現代人の目はつねに負担オーバーの状態です。画面の青い光が脳を刺激して寝つきが悪くなることもあるそうですから、十分に睡眠をとって目を休めるには就寝前のスマホ操作は我慢した方がいいですね。

 

週に少なくとも1日はアルコールを控えて肝臓をいたわる「休肝日」が勧められているように、本やテレビ、スマホ、パソコンを見ずに済ませて目をいたわる「休眼日」があってもよいのかもしれません。

 

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冬の健康、決まるのは秋

 

冬が大の苦手、という人ほど、秋の健康管理が大切です。東洋医学の考え方では、一つ前の季節での養生が体調を左右すると考えているからです。寒い冬に備えて、秋のうちに身体をしっかりと整えておきましょう。

 

秋に入って起こりがちな身体の不調のなかでも多いのが、肌のカサカサ、のどのイガイガですね。先日、ある音楽会に出かけたら、咳をする聴衆がずいぶん多かったのも季節のせいでしょうか。咳やくしゃみが出るのは仕方がないにしても、遠慮がないのはいけません。ハンカチで抑えるくらいはするのがマナーですよね。ちょっと脱線。

 

のどと肌、どちらの不調も乾燥が大きな要因になります。東洋医学でも秋は「燥」の季節にあたり、「燥邪(そうじゃ)」(乾燥による障害)を体調不良の原因として重視します。

 

それだけのことなら、東洋医学を持ち出さなくても当たり前のように思えます。でも、わざわざ「燥邪」と言ってみたのは、東洋医学ではこの季節の乾燥を外側と内側、2つの面でとらえているからです。

 

ひとつは空気の乾燥による燥邪、「外燥」です。のどの痛みや咳など呼吸器の症状が出やすくなるほか、皮膚の乾燥やかゆみなどのトラブルも起こりやすくなります。これは、誰にもわかりやすい道理ですね。

 

もうひとつの燥邪は「内燥」です。汗などによる水分の消耗や、睡眠が不足したり栄養が十分とれていなかったりする生活習慣の乱れが原因で、身体の中の潤いが不足する状態を言います。内燥は、口の渇きや手足のほてり、皮膚の乾燥のほか、便秘などの症状に表れることがあります。

 

秋に起こりやすい乾燥のうち、上に挙げた外燥は実感として分かりやすいのですが、内燥の方は気づきにくいのではありませんか。うがいや保湿クリームなどの対症措置だけでなく、冷たい飲食物を控えて胃や腸をいたわる、適度な運動を継続する、十分な睡眠をとるなど食生活や生活習慣にも気を配って、身体全体の気の流れを整えましょう。

 

あわせて体調の維持改善にツボ刺激を役立ててください。

◎内燥を軽減するツボ「経渠けいきょ」

◎のどの痛み・咳には「尺沢 しゃくたく」

◎皮膚のかゆみには「合谷 ごうこく」「肩髃 けんぐう」

 

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