養生

近年は病気になる前の予防が重視されています。東洋医学でも、古来より「養生」や「治未病」を大切に考え、その実践法を考案してきました。養生という言葉には、「健康に注意して元気でいられるように努める」という意味があります。東洋医学でいう健康とは「陰陽や気血水、臓腑の調和が取れ、中庸である状態」を指します。これは絶対的な数値で示されるものではなく、主観的な「健康感」による部分が大きいもの。他人と比較して一喜一憂するのではなく、自分なりの基準で心身の安寧を図り、自信や満足感を高めていくことが重要になります。養生法には、食事、運動、呼吸、瞑想など様々なものがありますが、東洋医学のツボ刺激も含まれます。いずれにしても長く継続することができ、かつ心地良い・楽しいといったプラスの効果が期待できるものが望ましいと思います。

身体の上部は陽、身体の下部は陰。気は陽、血や水は陰。腑は陽、臓は陰。これらの全体的なバランスを保つように、身体のツボを優しく刺激してみましょう。やはり古来より“万能の経穴”と呼ばれてきたツボは、養生においても大切になります。今回ご紹介するツボを上手く組み合わせて、皆さまの日々の「健康感」を高めていってください。

 

【紹介するツボ】

 


①百会(督脈)

耳を前に折り曲げ、左右の耳の先端を結ぶ線が、頭の正中線と交わるところ。

(※“つむじ”よりは少し前方になります。)

 

②合谷(手の陽明大腸経) 

母指と示指の骨が交わるところを確認し、その前方で示指側の骨際に取ります。

 

足三里(足の陽明胃経)  

下腿前面、犢鼻と解渓を結ぶ線上、犢鼻の下方3寸。

(膝蓋骨の先端の下にコリコリする膝蓋靭帯があり、その両脇に陥凹部があります。外側の陥凹部にあるツボを犢鼻〔とくび〕と呼びますが、この犢鼻から指4本分下の部分で、すねの骨の外縁に触れる筋肉〔前脛骨筋〕の部分に本穴が位置します。)

 

④三陰交(足の太陰脾経)

下腿内側、脛骨内縁の後際、内果尖の上方3寸。

(内果尖の高さから4横指分上方、脛骨の後縁に取穴します。)

 

⑤湧泉(ゆうせん)

足底、足指屈曲時、足底の最陥凹部

(足指を屈曲して、第2指・第3指の間のみずかきと踵とを結ぶ線を3等分し、みずかき側から1/3の部位の陥凹部になります。)

 

author:工藤 匡(鍼灸科学科長)

※暮らしと健康の月刊誌「ケア」2023年3月号に掲載された原稿です。