春は新生活が始まり、期待に胸を躍らせることがある一方、慣れない環境の変化で不安や緊張を感じやすくなり、睡眠の質が悪くなることも多々あります。そこで今回は、「不眠」について東洋医学の視点から捉えてみたいと思います。
東洋医学では、睡眠の質にも陰陽の調和が関係すると考えます。本来、陽の時間である日中は意識が高まり、陰の時間である夜間は意識が安らぐことが大切なのですが、不安や緊張が強まるとこのバランスが乱れてしまいます。東洋医学では、精神活動は脳だけでなく、肝・心・脾・肺・腎といった五臓に宿ると考えます。特に、精神活動の中でも重要となる「神(しん)」は心が司ります。不安や緊張によって心の働きが乱れると、安心(安神)が妨げられてしまい、さらに心に熱が生じてしまうと悶々として目がさえて眠れなくなってしまいます。心に熱が生じると、舌の赤味が強くなり、脈も速くなったりします。このような時は、安心(安神)効果のあるツボ押しを試してみてください。「春眠暁を覚えず…」の歌ではありませんが、春の夜は心地よく眠りたいものですね。
①神門(しんもん) 手の少陰心経
⇒手掌側の手首の横しわの内端、豆状骨の下縁。
(豆状骨につながる尺側手根屈筋腱の橈側(親指側)に取ります。)
②労宮(ろうきゅう) 手の厥陰心包経 ※令和2年7月号に「ストレス緩和」に掲載
⇒手掌面、第2・第3中手骨の間。
(手指を深く曲げたとき、示指と中指の指先の間(手掌の横しわの上)に取ります。)
③安眠(あんみん) 奇穴
⇒乳様突起の下の陥凹部の前方5分
(耳たぶの後方にある骨の出っ張りから小指の幅1本分ほど下方に取ります。)
④太渓(たいけい) 足の少陰腎経
⇒内果尖とアキレス腱の間の陥凹部、後脛骨動脈の拍動部
(内側のくるぶしの頂点の高さでアキレス腱との間。動脈の拍動部に取ります。)
author:工藤 匡(鍼灸科学科長)
※暮らしと健康の月刊誌「ケア」5月号に掲載された原稿です。