夏の暑さも一服し、秋の訪れを感じやすくなりました。急に肌寒くなることで体調を崩しやすいこの時期は、喉の不調も多くなりがち。そこで今回は、咳について東洋医学の視点から捉えてみます。
東洋医学では、秋は五行の金に属し、同じ金に属する臓である肺に影響を及ぼします。肺の病症である咳には急性と慢性があります。急性の咳は実証のものが多く、時期的に風寒の外邪が肺を犯し、肺気が上逆することで起こります。慢性の咳は虚証のものが多く、肺陰が不足して津液が損傷すると燥が生じ、肺が潤いを失うと乾いた咳を引き起こしたりします。秋は乾燥する時期ですので、体内に生じる燥の影響が大きくなります。肺がつかさどる鼻や皮膚も燥に注意してください。
風寒の外邪は首筋から侵入しやすいため、これからの時期は首まわりを冷やさないことが大切です。後ろの首筋にあるツボをお灸やドライヤーなどで温めるのも風邪予防にお薦めです。また、肺気の流れを良くするツボや、陰を補って熱を冷ますツボ、胸まわりの緊張を緩めるツボも合わせて試してみてください。
【紹介するツボ】
①大椎(督脈)
第7頸椎の棘突起の下縁にあるツボ。首を前に曲げたとき、最も出っ張る骨が目印です。
②風門(足の太陽膀胱経)
第2頸椎の棘突起の下縁の高さで、後正中線から2横指外方にあるツボ。
③中府(手の太陰肺経)
鎖骨の下縁外方にある窪みのところで、烏口突起と呼ばれる骨が触れます。その烏口突起の内縁で、親指の幅1本分ほど下方にあるツボ。
④尺沢(手の太陰肺経)
肘を曲げたときにできる横しわの上で、上腕二頭筋の腱の外側にあるツボ。
⑤復溜(足の少陰腎経)
内くるぶしの頂点から3横指上方の高さで、アキレス腱の前縁にあるツボ。
author:工藤 匡(鍼灸科学科長)
※暮らしと健康の月刊誌「ケア」11月号に掲載された原稿です。