東洋医学とツボのお話

ブログ授業の1回目は、5月17日の体験授業で予定していた「東洋医学とツボのお話」です。

講師は「経絡経穴概論(けいらくけいけつがいろん)」「臨床実習」などの授業を担当している志田貴広先生です。

 

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ツボはなぜ必要?

私は1年生と2年生で学ぶ「経絡経穴概論(けいらくけいけつがいろん)」という科目を担当しているのですが、この科目では400近い数の「ツボ」を勉強します。

こういう話を授業の最初にすると皆さん驚いてしまうのですが、一体こんなにたくさんのツボはなぜ必要なのでしょうか。

東洋医学」という紀元前から続く伝統的な医学に基づき、私たち鍼灸師はツボに対して鍼や灸を行います。ツボが必要な背景には、この東洋医学が大きくかかわっているのです。

 

身体のバランスを整える東洋医学

東洋医学には「身体のバランスを整える」という特長があります。皆さんも「心と体」という言葉を聞いたことがありますよね。

心が沈んでいるときに体を活発に動かすのは億劫ですし、体に痛みがあるときに心はなかなか晴れやかにはなりません。心と体、それぞれのバランスが取れている状態を私たちは「健康」と呼んでいます。

東洋医学は「心と体」のように、物事をいくつかに分けて身体のバランスを取ろうとします。その中でも特に重要視されるのが「五臓(ごぞう)」のバランスです。五臓とは、簡単に言うと「五つの臓器」のこと。すなわち、肝(かん)、心(しん)、脾(ひ)、肺(はい)、腎(じん)の五つです。この五臓のバランスが取れていることが健康の大前提になります。

 

五臓のバランスの崩れと未病

この五臓のバランスは、五つのうちのどれかが弱くなったり、強くなりすぎたりすると崩れます。「体調を崩した」という表現がこの状態に近いと思います。でも、この状態ではまだ「病気」というには早いですよね。東洋医学的にはこの状態を「未病(みびょう)」といい、病気になる前の段階としています。

では、この五臓のバランスの崩れはどのように直したらよいのでしょうか。

 

ツボ

私たち鍼灸師は、鍼や灸を行い五臓のバランスを調整します。ただし、五臓は体内にある臓器ですので、直接鍼や灸を行うことは現実的ではありません。ここで登場するのが「ツボ」なのです。

ツボは基本的に、五臓のような臓器と経絡(けいらく)という道でつながっています。そのため、体の表面にあるツボに鍼や灸を行うと、経絡を通じて五臓まで刺激が届き、バランスの改善が期待できるのです。

その際は、五臓のどれかが弱っていればそれを強めるような鍼や灸を、五臓のどれかが強くなりすぎているのであればそれを穏やかにするような鍼や灸を「適切なツボ」に行います。

では、「適切なツボ」とはどのようなツボなのでしょうか。
これに関しては先生ごとに様々な意見があるところだとは思いますが、私は患者さんとお話をしながら一緒に見つけていくものだと考えています。

鍼灸師の職域は「患者さんの体に鍼や灸を行う」こと。つまり、私たちができることは目の前の患者さんの中にしかありません。そのため、患者さんとのコミュニケーションが取れなければ「適切なツボ」を見つけることは難しいでしょう。

東洋医学は「人の体を理解するためのツール」ですので、勉強すればするほど患者さんとのコミュニケーションがとりやすくなり、面白くなると思います。

 

最後に

今回は「東洋医学とツボ」のお話でしたが、いかがでしたでしょうか。
とっつきにくいイメージの東洋医学ですが、大まかにとらえていくとわかりやすくなります。

でもシンプルな分、奥が深いのが東洋医学
本校では3年間じっくりと鍼灸東洋医学について勉強することができますよ!
ご興味がある方はぜひ学校説明会にお越しください。

 

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次回の【ブログ授業】は「身近な症状とツボのお話」の予定です。お楽しみに。



☆こちらもチェック 

www.shinkyu.ac.jp

 

本校への入学を検討されているみなさんへ

 

新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、今年度の本校のオープンキャンパスは【少人数制】【時間短縮の内容】に変更して開催することになりました。(体験授業や職業体験などを楽しみにしていただいていたみなさん、申し訳ありません…!)

できるだけみなさんの疑問を解消し、本校の特色をお伝えできるよう、今後はこのブログでも学校に関する情報を発信していきます。これまでよりもこまめに更新していく予定(?)ですので、チェックしてくださいね。

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毎日新型コロナウイルス関連のニュースが目に耳に入り、今後の経済や生活に対する不安は考えれば切りがありませんね。

 

また、こうした不安を抱えているときほど情報を追いかけ、その情報によって、いっそうの不安を生み出してしまいがちですが。

 

そんなときにこそ、おすすめしたい時間の使い方の一つが、“学び”です。

 

家にいる時間をただ不安に流されて過ごすのではなく、具体的に何かを始めることで、頭を支配していた不安を追い出してしまいましょう。何より、学びという自分磨きは、確実に力になります。“今は力を蓄えておくとき”と考えることで、気持ちも前を向きやすくなります。

 

本を読む、オンライン講座を始める…どれも有意義だと思いますが、本校HPを訪れてくださったみなさんには、東洋医学について学ぶことをおすすめします。東洋医学の考え方は手軽に生活に活かせるものが多く、セルフケアにも最適です。

 

参考:

www.shinkyu.ac.jp

 

ということで、今後こちらのブログでは、今年度の「体験授業」で予定していたテーマについて、担当教員が記事をアップしていきます。

また本ブログに立ち寄ってくださいね。

 

 

author:臨床センター 鍼灸師 池田

 

倦怠感

 

 春は環境の変化や精神的ストレスによって倦怠感を覚えることがあります。身近な症状であるこの倦怠感ですが、原因は実に様々。いくら休養しても回復しない場合、感染症や内臓疾患、うつ病などが隠れている可能性もあるため、きちんと医療機関で診察してもらうことが大切です。これらの疾患が除外されるようなら、東洋医学の視点からご自身の状態を捉えてみてください。

 

東洋医学では、気が不足する気虚の状態になると倦怠感が現れやすくなります。気虚にもいくつかの分類がありますが、代表的なものが脾気虚。食欲がわかない、食後のだるさや強い眠気に襲われやすい、下痢しやすいなどの症状が続くようなら、脾の働きが弱くなっている可能性があります。脾気虚では水分代謝が悪くなるため、舌がむくんで大きくなる、歯痕が目立つ、白い舌苔が増えるといった所見も認められたりします。

 

新型コロナウイルス感染の影響で何かと不便な生活が続いていますが、睡眠不足や冷えに注意しながら、脾の働きを良くし、気の生成を促す効能に優れたツボを心地よく刺激してみましょう。

 

author:工藤 匡(鍼灸科学科長) 

※暮らしと健康の月刊誌「ケア」5月号に掲載された原稿です。

 

 

東洋医学鍼灸の面白さ、奥深さをもっと知りたくなったら、お気軽に北海道鍼灸専門学校の学校説明会・体験授業へ

 

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陰陽のバランス整え新年度

春へと季節が移り変わるこの時期は、日によって寒暖の差が大きくなることもあり、体調を崩しやすくなります。東洋医学の面からも説明を加えると、季節の変わり目は「気」の変わり目でもあるため、陰陽のバランスが不安定になりがちで、これが体調不良につながるのです。

 

このブログで何度も触れてきたように、東洋医学の基本的な考えは陰陽二元論です。自然界には「陰の気」と「陽の気」が存在し、人間の身体はこれら「陰陽の気」の調和がとれていれば健康である、と東洋医学では考えます。そこで養生のポイントは、陰陽のバランスの維持・回復となるわけです。

 

暦の上では立春を過ぎたころから、外界の気の変化に合わせて身体においても陰陽の配分が変わっていきます。冬に盛んだった「陰の気」が衰えていき、かわりに「陽の気」が増していくのです。しかし、まだ「陽の気」は充分ではありません。気の力が外に向けて発散されるくらいに身体にみなぎっていないと、かえって「陽の気」が余分な熱となって身体に滞りやすくなります。この熱が頭痛や鼻炎などを引き起こす要因になるのです。

 

進級・進学・就職・異動と、新年度の始まりは身の回りも大きく変化する時期です。体調を整えて、新しい環境へスムーズに適応したいものです。これまでとは違った環境におかれると、誰でも多かれ少なかれ心理的なプレッシャーを感じるものですが、身体を健やかに保っていれば、心のピンチにも対処しやすくなるはずです。

 

鍼灸とは、ツボに刺激を与えて気の流れを整え、身体における陰陽のバランスを回復する技術です。自分でできる簡易な方法もありますから、試してみませんか。この時期だから、とくに覚えておきたいツボを紹介します。

 

◎まずは、冬から春にかけての養生のツボ、2つです。

腎兪(じんゆ)…へその真裏、腰の真ん中あたりにある背骨の出っ張りと出っ張りの間から手指2本分ほど外側。

肝兪(かんゆ)…肩甲骨の下端を探し、背骨までたどる。そこから骨の突起2個分を下がったところの指2本分外側。

 

◎そして、頭痛・鼻炎などの熱症状に効くツボ、2つです。

合谷(ごうこく)…手の甲側、親指と人差し指の間のくぼんだところ。

手三里(てさんり)…肘を曲げたときにできる横シワの外側から手指3本分ほど手首寄りのところ。

 

いずれのツボも指でイタ気持ちいいくらいの力で押すといいでしょう。

 

東洋医学鍼灸の面白さ、奥深さをもっと知りたくなったら、お気軽に北海道鍼灸専門学校の学校説明会・体験授業へ

 

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自分の「臓」タイプを知ろう

「この人はなんだか陰気だ」とか「あの人は、いつも陽気だ」という表現はよく耳にしますよね。この「陰気」と「陽気」、元をたどれば古代中国の自然哲学である易学にさかのぼります。易学の根本にあるのが「陰陽」思想です。天地の間の万物は、太陽と月、昼と夜、暖と寒、夏と冬など相反する性質を持った2つの気、陽気と陰気によって成り立つとする考え方です。

 

東洋医学の根底にあるのも陰陽の原理です。病気や異常があれば、それは身体の中で働く陰気と陽気のバランスがくずれた状態――そう見るのが東洋医学です。陰と陽は常に拮抗しているのが望ましく、陰が優勢でもダメだし、陽に傾きすぎてもいけないのです。

 

ところが、とくに現代人は、この陰陽のバランスを失いがちです。なぜでしょうか。端的に言えば、生活リズムが自然のリズムとズレているからです。本来であれば、太陽が沈む時間帯以降は休息(=陰)の準備を整えるべきなのですが、逆に仕事や勉強、スポーツなどの活動(=陽)にあてる人が多く、これでは陽気が過剰になってしまいます。

 

こうした生活を続けていると、次第に身体に陽気が強まり、陰気が減っていきます。すると、過剰な陽気によって身体に「余分な熱」が生じます。この結果、たとえば皮膚や粘膜が熱に反応して、鼻炎や口内炎を起こしたり、皮膚の痒みに悩まされたりするのです。そういえば、人の性格でも、あまり陽気過ぎるのも困りものだったりしますからね。ほどほどが肝心です。

 

症状の原因となる余分な熱がどこに生じているかを見極め、ツボを刺激して取り去ったり、体調不良につながる余分な熱が発生しないよう先手を打って気の流れを整えたりするのが鍼灸治療です。鍼も灸も治療の根本にあるのは、陰陽のバランスの維持と回復なのです。

 

自分の「臓」タイプが分かると、陰陽のバランス回復に有効なツボも分かります。あなたの場合、肝・心・肺・脾・腎のうち、どの「臓」に余分な熱が生じやすいか、簡易な自己チェックをしてみましょう。その下の症状1~5のうち、当てはまる項目が多いのはどれでしょうか。

 

症状1

□寝つきが悪い。興奮して眠れない

□肩こりを常に感じている

□のどに詰まりを感じる

□ため息が多い

□まぶたが痙攣しやすい

 

症状2

□のぼせやすい

□暑がりの方である

□動悸を感じやすい

口内炎ができやすい

□よく眠れない。夢を見ることが多い

 

症状3

□食後、すぐに眠くなる

□夕方・運動後に疲れを強く感じる

□足がむくみやすい

口内炎ができやすい

□下痢をしやすい

 

症状4

□風邪をひきやすい

□アレルギーがある

□肌が弱い

□鼻がつまりやすい

□肌の色が白い

 

症状5

□布団に入ってもなかなか眠れない

□頭が重い感じや耳鳴りがある

□手足がほてりやすい

□眼の周りがくすむ

□足腰がだるい

 

症状1の項目に多く該当した人

→肝タイプ…効くツボは「太衝 たいしょう」

 

症状2の項目に多く該当した人

→心タイプ…効くツボは「神門 しんもん」

 

症状3の項目に多く該当した人

→脾タイプ…効くツボは「太白 たいはく」

 

症状4の項目に多く該当した人

→肺タイプ…効くツボは「太淵 たいえん」

 

症状5の項目に多く該当した人

→腎タイプ…効くツボは「太渓 たいけい」

 

東洋医学鍼灸の面白さ、奥深さをもっと知りたくなったら、お気軽に北海道鍼灸専門学校の学校説明会・体験授業へ

 

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腰痛


今シーズンは全国的に雪の少ない日が続きどうなるかと思いましたが、2月に入り急激に降雪量は増え、気温も低い日が多くなりました。まだまだ身体はこわばりやすく、不調も多くなりがちです。今回は、身近な「腰痛」について東洋医学の視点から考えてみたいと思います。

 

東洋医学的には、慢性タイプの腰痛の原因のひとつとして「寒湿(かんしつ)」が挙げられます。寒湿とは、寒邪と湿邪が結びついた病態で、陽気や血の流れを滞らせ、筋や関節のこわばりや痛みを引き起こします。寒湿による腰痛では、寒冷刺激で増悪するが逆に少し動くと軽減する、じっとしている時間が長いとこわばる、腰下肢が冷えて痛むなどの特徴があります。

 

また、身体に冷えや異常な水分である痰湿が多くなると、舌や脈にも変化が現れてきます。舌の色が白っぽい、舌の苔が白く厚い、脈が沈んで遅いなどの所見は、寒湿による影響の可能性が考えられます。

 

身体を冷やさないように保温する、冷たい飲食の摂り過ぎを控えるといった日常生活の工夫に加えて、寒湿の改善に効能があるとされるツボの刺激も試してみてください。お灸もおすすめです。

 

 

author:工藤 匡(本校教員、附属臨床センター長)

※暮らしと健康の月刊誌「ケア」3月号の原稿を一部変更しています。

 

 

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この冬も膝が痛いとお嘆きのあなたに

寒さが厳しくなると膝が痛む、あるいは痛みがふだんより強くなる――中高年の方や、膝を痛めたことのある方からそんな声を聞いたことがありませんか。

 

今回は、膝の不調を軽くするツボを紹介しますが、その前に、寒い季節に膝の痛みや曲げにくさが生じやすい理由から。

 

たとえば、凍結して滑りやすい路面では、転倒しないように歩幅を狭くして、猫背気味に膝を曲げて歩いてしまいがちです。加えて厚手の衣類やブーツなどの着用で、足首や膝の曲げ伸ばしも小さくなります。本来であれば大きく身体を動かして緊張した筋肉をリセットしたいところですが、他の季節にくらべて屋内で過ごす時間が増え、運動量は低下。こうした条件が重なり、足の筋肉はしなやかさを失い、膝の動かしにくさや痛みに繋がっていくのです。

 

冬場は寒さから気・血・水のめぐりが悪くなります。膝関節に熱感や腫れがないことを確認し、問題がないようでしたら、次のツボを刺激してみてください。ツボ押しのほか、「血海」「梁丘 」「足三里 」はドラッグストアなどで売られているお灸もお勧めです。めぐりが良くなることで膝が楽になります。

 

「血海 けっかい」

「梁丘 りょうきゅう」

「陰陵泉 いんりょうせん」

足三里 あしさんり」

「委中 いちゅう」

 

ちなみに「膝掛」「膝毛布」は俳句で冬の季語なのですが、膝が寒かったり痛かったりしたら、よい句もできそうにありません。詠む前に、まずは上で紹介したツボ刺激してみましょう。

 

東洋医学鍼灸の面白さ、奥深さをもっと知りたくなったら、お気軽に北海道鍼灸専門学校の学校説明会・体験授業へ

 

 

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