春の準備のツボ

少しずつ春の足音が聞こえてくる季節になりました。春は環境がガラリと変わりやすい季節です。入学や就職などで新たな一歩を踏み出す方も多いのではないでしょうか。

東洋医学においても春は変化の季節。雪が解けて草木が芽吹き、自由に伸びていく。このような春の特徴を「曲直(きょくちょく)」と表しています。このような季節であるため、思ったように物事が運ばないとストレスを感じやすい季節でもあります。

今回ご紹介するのは合谷(ごうこく)と太衝(たいしょう)という手足のツボです。指で押してみるとズーンと奥に響くような感じのするツボですので、「気持ちが良い程度に」じっくり数回ずつ押してみましょう。

特に春は「春眠暁を覚えず」という言葉の通り、朝起きてから動き出すまでに時間がかかりやすい季節です。起床時に刺激して頂くと一日をスムーズに始められるかもしれませんね。

 

 

 

author:志田 貴広(鍼灸科学科長)

※暮らしと健康の月刊誌「ケア」2024年3月号に掲載された原稿です。

 

 

手足の冷えが気になるときのツボ療法

いよいよ寒さが厳しくなってまいりました。冷え性の方にはつらい季節ですね。

今回は手足の冷えが気になるときのツボ療法をお教えします。

寒くてなかなか起きられない朝や、夜の眠る前のひとときなど少しの時間を利用して井穴(せいけつ)という、指先や足の裏にあるツボを刺激してみましょう。

井穴には経絡(けいらく)という気の通り道に働きかけ、血液の流れを良くして身体を温める効果があるといわれています。

ほとんどの井穴は指先にありますので、すべての指の爪のあたりを一つの指に対して10秒ほど揉んでみるとよいでしょう。

 

 

台座灸をお持ちの方は冷えを強く感じる指の井穴や足裏にある井穴の湧泉(ゆうせん)に温灸を行うとより良い効果が期待できます。

 

東洋医学は内臓のバランスを良くすることで冷えの改善をはかります。

井穴への刺激は補助的なものですので、冷え性でお悩みの方は鍼灸(しんきゅう)や漢方薬の専門家にご相談をしてみてはいかがでしょうか。

 

author:志田 貴広(鍼灸科学科長)

※暮らしと健康の月刊誌「ケア」2024年1月号に掲載された原稿です。

気持ちが落ち込んだときのツボ

夏が終わり北海道にも秋がやってきました。この短い秋が終わると長い冬が訪れます。寒さが苦手な方には少し憂鬱な季節かもしれませんね。

実は、東洋医学で秋は「悲しみを感じやすい季節」とされています。今回は気持ちが落ち込んだ時に効果的なツボをご紹介します。

 

悲しみの感情と肺の健康状態

東洋医学では、肺の健康状態が悲しみの感情に関わっているといわれています。肺の健康状態は中府(ちゅうふ)というツボに現れることが多いので、ぜひ押してみて下さい。


中府:鎖骨の下を外に向かって撫でると当たる骨から指2本分下のところ

 

硬かったり痛かったりしませんか?該当する方は中府だけでなく孔最(こうさい)と太淵(たいえん)というツボも押してほぐしてみましょう。少し中府の硬さや痛みが取れるのではないでしょうか。

孔最:肘から手首までを三等分して、肘から三分の一のところ

太淵:手首の親指側の端で、血管が脈打っているところ

 

ツボ押しは気分転換のきっかけです。身体がスッキリしたらぜひ楽しいことを探してみて下さいね。

 

author:志田 貴広(鍼灸科学科長)

※暮らしと健康の月刊誌「ケア」2023年11月号に掲載された原稿です。

冷えでお腹の調子が悪いときのツボ療法

暑い日が続くと、ついつい冷たいものを食べすぎたり飲みすぎたりしてしまうという方、意外と多いのではないでしょうか。また、窓を開けたまま寝てしまって朝方の冷えでお腹を冷やしてしまいお腹の調子が悪い、という方もいらっしゃるかもしれません。

今回は冷えでお腹の調子が悪くなったときに使えるツボ療法をお教えします。

◆お腹が痛くて下してしまう場合

・天枢(てんすう)

おへそから指三本分離れたところにあります。

 

・上巨虚(じょうこきょ)
 
膝の関節から指八本分下に行ったところにあります。

 


◆下痢をしてもお腹が痛くならない場合

・関元(かんげん)
 
おへそから指4本分下にあります。

 

・太渓(たいけい)

くるぶしの内側のでっぱりとアキレス腱の真ん中の、くぼんでいる部分にあります。



*冷えが原因なので、指で押しながら温めたり、市販の温灸(おんきゅう)を使ってツボをしっかり温めたりするとより効果的です。

 

author:志田 貴広(鍼灸科学科長)

※暮らしと健康の月刊誌「ケア」2023年9月号に掲載された原稿です。

身体が重だるく感じる時のツボ

6月から7月の北海道には本州のような梅雨はないですが、雨が続く時期がありますよね。蝦夷梅雨(えぞつゆ)とも呼ばれるこの天候不順は、天気で体調が左右される方には辛いもの。今回は身体が重だるく感じる時のツボをご紹介しますね。

東洋医学ではこの重だるさの原因は湿邪(しつじゃ)にあると考えます。湿邪は簡単にいうと「身体に溜まる余計な水分」のこと。むくみの原因ともいわれています。

甘いものを食べすぎたり、脂っこいものを食べすぎたりすると胃腸が弱り、身体に余計な水分が溜まっていきます。身体につく脂肪も湿邪の一種です。

身体に湿邪を貯めないコツは、適度な運動で汗をかき水分の代謝を促すこと。そして、食べすぎたり飲みすぎたりしないことです。

身体に湿邪が多い人は、雨などで湿度が上がると体調が悪くなってしまいます。それを防ぐには胃腸を活性化させるツボを刺激しましょう。

 


足三里:膝のお皿の下にあるくぼみから指4本分下りたところ、すねの筋肉のところにあります。


中脘:おへそに手を当て、指4本分上がったところにあります。押すと硬かったり、苦しかったりすることが多いです。

 


太白:足の親指の関節の後ろ側にあります。少し骨が凹んでいるところです。

 

湿邪を取り除くには、上記のツボを押して刺激する以外にもお灸が効果的です。台座灸と呼ばれるタイプのお灸は大きめのドラッグストアなどで入手できますので、使用上の注意をよく読みご使用を検討してみてください。

 

 

author:志田 貴広(鍼灸科学科長)

※暮らしと健康の月刊誌「ケア」2023年7月号に掲載された原稿です。

春の症状によく効くツボ「三陰交(さんいんこう)」

春は環境が変わる方も多く、ウキウキと心おどる季節ですね。楽しいことも多いですが、ソワソワと落ち着かない、という方もいるかもしれません。


東洋医学では、春は木々が芽吹いてのびやかに育つ時期とされています。そのため、やりたくないことを続けたり、緊張が続いたりするとストレスを抱えやすい時期なのです。そのストレスが気の流れを悪くすると、頭や肩に気が溜まってしまい、頭痛や肩こりなどを起こすといわれています。

実は、そういう症状が出る方は足が冷えていることが多いのです。気は温かいものですので、それが上がりっぱなしになると下の方を温められずに足が冷えてしまうのです。養生の言葉で、頭寒足熱という言葉がありますが、春は足を温めてあげるとさまざまな症状が和らぐことがあります。

 

三陰交の場所

内くるぶしの頂点に手を当てて、指4本分上に行ったところにあります。骨の後ろ側にツボがありますが、骨自体が凹んでいる方もいます。

 

 

 

*ツボ療法のやり方*

押して刺激する場合

毎朝、毎晩など筋肉をほぐす感じで押してあげましょう。お風呂上りに押すのも良いです。押す強さは気持ちよく感じる程度にしておきましょう。

 

お灸を使う場合

大きめのドラッグストアさんには、一般の方でも使える台座灸(だいざきゅう)というタイプのお灸が売られています。この台座灸を三陰交に行うとより足が温まります。最初はあまり熱くないものからお試しになると良いでしょう。※台座灸を使用の際は使用上の注意をよく読んでからご使用ください。

 

author:志田 貴広(鍼灸科学科長)

※暮らしと健康の月刊誌「ケア」2023年5月号に掲載された原稿です。

養生

近年は病気になる前の予防が重視されています。東洋医学でも、古来より「養生」や「治未病」を大切に考え、その実践法を考案してきました。養生という言葉には、「健康に注意して元気でいられるように努める」という意味があります。東洋医学でいう健康とは「陰陽や気血水、臓腑の調和が取れ、中庸である状態」を指します。これは絶対的な数値で示されるものではなく、主観的な「健康感」による部分が大きいもの。他人と比較して一喜一憂するのではなく、自分なりの基準で心身の安寧を図り、自信や満足感を高めていくことが重要になります。養生法には、食事、運動、呼吸、瞑想など様々なものがありますが、東洋医学のツボ刺激も含まれます。いずれにしても長く継続することができ、かつ心地良い・楽しいといったプラスの効果が期待できるものが望ましいと思います。

身体の上部は陽、身体の下部は陰。気は陽、血や水は陰。腑は陽、臓は陰。これらの全体的なバランスを保つように、身体のツボを優しく刺激してみましょう。やはり古来より“万能の経穴”と呼ばれてきたツボは、養生においても大切になります。今回ご紹介するツボを上手く組み合わせて、皆さまの日々の「健康感」を高めていってください。

 

【紹介するツボ】

 


①百会(督脈)

耳を前に折り曲げ、左右の耳の先端を結ぶ線が、頭の正中線と交わるところ。

(※“つむじ”よりは少し前方になります。)

 

②合谷(手の陽明大腸経) 

母指と示指の骨が交わるところを確認し、その前方で示指側の骨際に取ります。

 

足三里(足の陽明胃経)  

下腿前面、犢鼻と解渓を結ぶ線上、犢鼻の下方3寸。

(膝蓋骨の先端の下にコリコリする膝蓋靭帯があり、その両脇に陥凹部があります。外側の陥凹部にあるツボを犢鼻〔とくび〕と呼びますが、この犢鼻から指4本分下の部分で、すねの骨の外縁に触れる筋肉〔前脛骨筋〕の部分に本穴が位置します。)

 

④三陰交(足の太陰脾経)

下腿内側、脛骨内縁の後際、内果尖の上方3寸。

(内果尖の高さから4横指分上方、脛骨の後縁に取穴します。)

 

⑤湧泉(ゆうせん)

足底、足指屈曲時、足底の最陥凹部

(足指を屈曲して、第2指・第3指の間のみずかきと踵とを結ぶ線を3等分し、みずかき側から1/3の部位の陥凹部になります。)

 

author:工藤 匡(鍼灸科学科長)

※暮らしと健康の月刊誌「ケア」2023年3月号に掲載された原稿です。